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インドのトイレ事情!スカベンジャー解放を目指すNGOスラブインターナショナルとは?

インドのトイレ事情

こんにちは、さいの(@meranamerikohai)です。

以前こんなツイートをしました。


このようにインドでは、農村やスラムを中心に家庭にトイレがない家が多く存在します。実はその原因にはヒンドゥー教の浄・不浄の概念が…

今回の記事では、前半でそんなインドのトイレ事情、後半でそれに取り組むNGOスラブ・インターナショナルの活動をまとめていきます!

インドのトイレ事情

まず、これを見て下さい。


インドではこんなトリッキーなトイレがあるんですよ…

さいの
さいの
本筋と関係ないのですが、トイレの記事を読んでくれた人にぜひ見てほしくって載せちゃった

ユニセフ調べの2015年時点のデータでは、インドで野外排泄をしている人口は5億6425万人存在し世界の中でもトップです。現在のインドの人口は13億人ほどいるので約4割の人々が屋外で排泄していることになります。その多くは農村部、そしてスラムであると思われます。

実際私も学生時代に農村部でホームステイをした時、泊まらせてもらった家庭にはトイレがなかったのでトイレに行く時は、他の女性と一緒に茂みに隠れて用を足しました。

しかし、屋外で排泄をすることの問題もあります。まず女性の場合は、性犯罪に巻き込まれる可能性があります。実際、2014年5月には用を足すために屋外に出た少女2人が性的暴行を受けて殺害されてしまいました。また、茂みで用を足す場合は蛇や野犬に噛まれたりといった別の危険もあります。

冒頭のTwitterにもあるように、このように危険が多い屋外排泄を避けるために猛暑でも水を飲む量をなるべく抑える人々もいます。

その他にも、衛生面の問題もあります。農村部の人々は生活用水や飲料水を井戸や近くの河川から汲み上げていることも珍しくありません。井戸や水源の近くで排泄することで水が汚染され、汚染された水を飲むことで乳幼児が下痢になるなどの健康被害が出ています。

インドのトイレと不浄の概念

トイレPhoto by Michael Jasmund on Unsplash

では、なぜインドの多くの人々が家庭にトイレを持っていないのでしょうか?

トイレを建設するお金がないという理由もありますが、それ以上に大きいのがインド国民の約8割が信仰するヒンドゥー教の教えです。

ヒンドゥー教では、死や血、排泄物など人間の体内から出たものを不浄と捉えています。そのため、家の中には不浄なトイレを設置したくないという気持ちがあるようです。ちなみに、女性の生理も血が出るので不浄とされ、生理期間中は女性は神聖な場所に立ち入れないという慣習もあります。

ヒンドゥー教の神様たち
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このような状況に対して、インド政府は「2019までに屋外排泄ゼロ」を目指してトイレの新設プロジェクトを行ってきました。なんと、2019年2月時点で普及率は98%と言われています。

しかし、トイレ以前に上下水道の整備がされていない多くの農村部では、トイレは汲取式という形をとります。汲取式のトイレでは、地中に穴を掘りそこに糞尿がたまりそれを汲み出す必要があります。でないと穴が満杯になりトイレが結局機能しなくなってしまうからです。

しかし先程書いたように、排泄物は不浄なものとされているため古くから低カーストの人々が行っていました。よって誰もこの汲み出す作業をやりたがらないそうです。(ちなみに人がトイレの汲み取り作業をすることは法律で禁止されているそうですが、いまだに行われている地域もあるようです。)そして結局はトイレが新設されても使われなくなってしまいます。

インドNGOスラブインターナショナル

スラブインターナショナルここで、インドのトイレ問題に取り組んでいるNGOを紹介します。スラブインターナショナルは、1970年にBindeshwar Pathakという方がスカベンジャー(排泄物処理や死体処理をする低カーストの人々)の解放を掲げて立ち上げた非営利組織です。

さきほども書いたようにインドでは排泄物や死体などに関わる仕事は不浄とされ低カーストの人々が行います。記事末の参考記事の中では、こうした汲み取り作業をする人々はその対価としてほんのわずかな賃金を受け取るだけで、人々から敬意を払われずしばしばその非衛生な仕事により下痢などの病気にかかると言います。

スラブインターナショナルは従来の汲み上げ式ではなく、下水設備がなくても使用できるトイレを開発し普及させることでこれまでに多くの人々を汲み取り作業から解放してきました。上位カーストの出身であるビンデシュワール氏がこのような活動を始めるきっかけは、幼少期の経験とスラムで数ヶ月過ごした経験が影響しているそうです。

ビンデシュワール氏が幼少期に(不浄とされる)低カーストの女性に触れた時、彼の祖母が激怒をし、その後清めるためにガンジス川の水や牛の糞尿を飲まされた経験が強く記憶に残っていると言います。悲しい現実ですが、カースト間でのそういった差別は私もインドで見てきました。

このような経験から、ビンデシュワール氏は彼らの尊厳を取り戻すための活動を始めたそうです。

下水設備必要なしの2層式トイレを普及

スラブインターナショナルのトイレ

スラブインターナショナルは、下水処理設備が不要な2層式トイレを開発しました。農村部を始め都市部の一部の地域でも下水設備は整っていない場所も多くこのようなトイレはまさに現地に適した技術だと感じます。

そのトイレはSulabh Shauchalaya(スラブシャウチャラヤ)と呼ばれています。人々にも受け入れられ、コストもそこまでかからず、技術も適正なトイレです。

どういう仕組みかというと、こちらの方の説明がわかりやすかったので引用。

それぞれの肥溜めは家族の排泄物が2年でいっぱいになるサイズ。一方の肥溜めがいっぱいになったら、トイレの排管はもう一方の肥溜めにつながれ、はじめの肥溜めの排泄物は2年間放置される。その間に土に戻るという画期的なエコシステム。

引用:http://blog.livedoor.jp/shraddha/archives/cat_10014639.html

高度な設備ではなく意外と単純なこのトイレが、下水処理設備がない地域でまさに必要とされているトイレだったんですね。

100万のスカベンジャーを解放

解放された気分の女性Photo by Aditya Saxena on Unsplash

これまでに普及させた2層式トイレは、家庭用に150万世帯、政府系の公共トイレも6000万に登ります。またそれにより解放されたスカベンジャーの数は100万にのぼるそうです。

その成果はやはり大きく、スラブインターナショナルは国内外でも有名です。インドだけではなくネパールやブータンなど近隣諸国でも活動をしており、国連などと協力をしています。また2018年にはビンデシュワール氏は「日経アジア賞」文化・社会部門を受賞しています。

2019年までに「屋外排泄ゼロ」を掲げているインド政府の政策実行にも関わっているのではと思いますが全てがこの形式のトイレではないと思われます。このような持続可能なその土地に合ったトイレが早く普及するといいですね。

まとめ

以上、今回はインドのトイレ事情とその問題に取り組むNGOスラブインターナショナルの取り組みをまとめてきました。

下水処理設備がない農村やスラムでも、管理をせずに持続的に使用できるスラブインターナショナルのトイレがより普及することを願います。